文化学院旧館校舎の保存について、ご協力頂いた皆様へのご報告
2006年9月吉日

拝啓
初秋の空がさわやかな季節、ますます御健勝のこととお喜び申し上げます。

 本年3月、文化学院旧館校舎保存を望むもの達が集まって発足した、「文化学院を愛する会」は、
多くの方々にご協力、ご支援、ご助言を頂いてまいりましたが、旧館校舎は別記のような経過を経て、
一部保存に向けて歩み出すこととなりました。
 この間、「文化学院を愛する会」の活動はインターネットを通し、各分野に発信し、海外のOBからも思いがけず、賛同のメールを頂き、現在の賛同者は1000人を越えております。活動の経過は随時メールやホームページで
発信してまいりましたが、時間と資金の不足から、書面での報告ができずに今日に至りましたことを、お詫び申し上げます。
 本年2月から今日に至る経過を別紙にまとめましたので、ご参照下さい。

 今後、保存方法について文化学院と話し合いを重ねていくつもりでおりますが、保存部分についての運用方法の
提案ばかりでなく、経済的なことも含め、「文化学院を愛する会」として、どのように学校に協力していくべきか、
皆様のご意見も伺わせて頂けると幸いです。
 さらなるご支援ご鞭撻を重ねてお願い申し上げます。
敬具
『文化学院を愛する会』発起人一同
            



経過説明

 「学校法人文化学院」は本年2月に校舎建て替えの発表を行いました。建て替えのため解体される校舎には、
1937年竣工の西村伊作設計の旧館校舎も含まれていたため、在校生やOB、その父兄、お茶ノ水の街並みを
愛する方々から保存を望む声が広がってゆきました。
 文化学院による建て替え計画のスケジュールは非常にタイトで、2月初旬に初めて計画が発表された時点で
既に、校舎の解体は4月末に予定されており、関係者へのよびかけと保存要望のとりまとめは急を要していました。

 そのような状況の中、「文化学院を愛する会」は、OB達が中心となって3月に発足し、文化学院および
千代田区、千代田区議会に対し、1937年竣工の旧館校舎の保存活用に関する要望書を提出しました。
 私達は文化学院校舎が、卒業生や在校生ばかりでなく、地域住民や芸術・文学・建築・都市分野の方々にも
愛されてきたことに着目し、幅広い方々に知らせていくことに努めるとともに、校舎建て替えの知らせを受けて
学校に集まってきた卒業生や その関係者に、保存の可能性が残されていることを訴えました。
この間に「日本建築学会」「日本建築家協会」「docomomo japan」からも保存に関する要望書が提出され
専門家からの評価が高いことも明らかになりました。
 また、旧館校舎が「千代田区景観まちづくり重要物件」に指定されていたことから、早い時期に千代田区にも
保存を働きかけ、区長および区議会にも直接説明を行いました。千代田区は重要物件の指定者として、
条例による強制力はないものの、文化学院と愛する会の調整役となり、2回の話し合いが行われましたが、
旧館校舎の保存活用を要望する私たちと、全面解体建て替えの計画を進める文化学院の間には隔たりが
ありました。

 このような経緯の中、5月17日、千代田区景観まちづくり審議会が開催されました。
審議会のメンバーは大学教授、千代田区議会議員、地域住民、公募委員からなり、
会長は西村幸夫 東京大学教授(都市計画)、副会長・進士五十八 東京農業大学学長(景観論)で
構成されています。
審議会では「文化学院の重要物件指定解除について」が議題に上がり、各委員から保存を前提とした
具体的な提言がなされました。
 傍聴席の「愛する会」のメンバーにも発言の機会が与えられ、卒業生が校舎に込める思い、
保存への提案、などを訴えました。
 最後にまとめられた西村幸夫会長は、「文化学院は創設者が僧院のような建物として校舎を設計したと
言われている。道路に面した壁面とアーチをくぐった中に広がる中庭が、ユートピアのような空間を作り出し、
建物自身が創設者の描いた理想の学校精神を体現している。お茶の水の街並みに深く定着している部分を
できるだけ残す工夫をするよう、強く文化学院側に要望する。」と、結びました。

 その後、文化学院と愛する会との直接の話し合いは継続されず、千代田区を介してお互いの意向を
伝えるという形になっていきましたが、千代田区より、文化学院が景観まちづくり審議会の提言に応え、
入り口アーチ部分を保存し、残りの壁面に関しても新校舎完成後、旧館校舎のイメージを継承した新たな壁面を
構築するという方向での検討を進め、アーチ部分の保存活用方法は今後新校舎建築中に話し合ってゆく
方針を示した、との説明を受けました。
 そこで、5月19日、私たちは緊急会議を開き、協議の結果、文化学院の判断を建設的に受け止め、
今後はその内容の実現と充実に向けて学院と協力することで、旧館校舎に表わされた文化学院の精神を
次世代に受け継ぐという、初期の目的を担い続けよう、ということを確認しました。
 私たち「文化学院を愛する会」のこの意向は千代田区を通し、文化学院に伝えられました。

 千代田区も文化学院の決定を評価し、5月末には「景観まちづくり条例」重要物件指定を解除したため、
6月末よりアーチ部分を残した形で、校舎の解体が開始されました。

 これらのことは8月3日に開催された「千代田区景観まちづくり審議会」で木下建築指導課長から
以下のように報告されました。
 「審議会での強い要望を踏まえて、調整を行った結果、旧校舎のアーチ部分(3階まで)を残して
解体を行うことと、通り沿いの壁面を再生することで、文化学院と愛する会との間で合意に至りました。
 このことについて、景観まちづくり審議会の西村会長、進士副会長とも協議した結果、今回の提案は
区としても評価できるものと判断し、千代田区景観まちづくり重要物件の指定を解除することに
いたしました。
 今後は、新校舎の工事期間中である約一年半をかけて、協議を継続していくことになります。
 区は、今後もアーチ部分の保存方法などについて、文化学院と愛する会との調整を行っていく予定です。」


現在、校舎の状況はアーチの部分のみが残され、その他の解体は終了しています。

以上









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