「文化学院校舎建て替えについて」
これまでの事実報告と文化学院を愛する会の見解





2月6日 在校生に校舎建て替えと仮校舎の発表がある。
2月14日 在校生に説明会開催 紛糾。


校舎建て替えの計画は、濱田病院の建て替え計画が発表された頃(お知らせ看板は1月25日設置)から
提案され、2月3日の理事会で正式決定されました。
学生への初めての説明会が行われた2月14日には早くも校舎の設計案のCG が映し出されました。
設計案は1階から4階がスタジオになっており、5階から12階が教室と学生 ホール13,14階が講堂と
なっています。
入口のアーチに旧館のイメージを残したと説明していますが、オフィスビルのような印象を受けるデザインで、
旧館とは全く異なった設計となっています。


2月14日の説明会には在校生から話を聞いた保護者や、現役講師から連絡を受けた一部の卒業生も
出席し、この場で学院経営をビックカメラを親会社とする日本BS放送(株)が受け継いだことが明らかに
されました。
講堂を授業で使っていた演劇コースの教師からは仮校舎に演劇コースの学習環境がないことが指摘され、
説明の不透明さも学生、保護者に不安を与え、紛糾 したまま、次回の説明会開催を約束して終了しました。


学校経営は創設者の西村伊作が亡くなってからは校長を娘の石田アヤが引き継 ぎ、その後も創設者の
親族が引き継いできました。
しかし、2005年11月に突然、日本BS放送(株)に経営権が委譲され、 新理事長には日本BS放送(株)
副社長の松崎淳嗣氏が就任し、経営権のある理事は松崎理事長ひとりとなりました。


卒業生には2月3日付の校舎建て替えのお知らせが2月16日頃届けられ、 徐々に旧校舎を残して欲しいと
いう声が出始めました。


西村伊作が設計し、昭和12年に竣工した文化学院旧校舎は千代田区景観条例 重要物件に指定されている
ことが判明。


* * *


文化学院理事長が何回も繰り返し説明する早急に校舎建替えの理由

 1. 耐震診断の結果 震度5強で校舎が倒壊するおそれがあるとの結果が出 た。
 2. アスベストが使用されていることがわかった。
 3. 設備の老朽化 。
 4. 隣地濱田病院の新築計画があり、日照が著しく遮られる。工事中の騒音 被害も見込まれる。
 5. 近年、少子化の影響で、学生数が減少して、経営が厳しくなってきた。
 6. 旧館は道路に面して目一杯建っているため、保存して奥の工事が不可能。
 7. 仮校舎への移転期間を極力短くし、無駄な出費を少なくする。
 8. 2007年12月までに校舎を完成させなければ、2008年4月の新入生募集の準備に間に合わない。


学院側の立て替え理由について、愛する会の見解

 1.について
  「耐震偽造」事件を契機に「耐震性能」に国民が感心を持ったことは好ましいことではありますが、逆に
  その言葉が、利用される状況もあります。
  「耐震性能 」 の一言は保存をのぞむ方々を尻込みさせるには十分な威力があります。
  昭和初期の鉄筋コンクリート造建築物の評価は一般に高く、阪神淡路震災でもそのことを裏付ける
  調査結果が報告されています。
  文化学院の校舎も耐震壁が多く設 けられ、事業主が説明するように、震度5強で崩壊するようには
  考えにくく、 再検討の価値があります。
  設計者は関東大震災で木造の校舎を失い、耐震性能の高い、鉄筋コンクリート造の校舎を建てようと
  計画しました。
  建築の費用は震災復興助成金と在学生の父兄、教員、卒業生などに学校債を募り建築が実現しました。
  そのような多くの人々の思いが込もった建物を解体するには関係者ばかりでな く、この建物を愛する
  地域の方々を納得させるものでなくてはなりません。
  
  学院側の説明に対して、私達は耐震診断の内容を問い、計算書の公表をお願い しました。
  それに対して、「耐震診断を行った専門家から直接説明を行うが、計 算書が一人歩きされては困るので、
  渡すことはできない。」という回答をもらっています。

  専門家の調査内容というものは、前提をどこに置くかによって、180度違っ たものになることがあります。
  耐震診断も同じように解体を前提に行う診断では、現行の耐震設計基準に則って行えば、耐震性能が
  ないという結果が出た段階で、診断を終了することがあ ります。
  設計者からも「一次診断しかしていません。」という回答を頂いています。
  構造壁を評価の対象とし、精査な診断を行えば、耐震性能があるという結果を 得ることも十分考えられ
  ます。
  学術的に精査な診断を行わずに、「耐震性能がなく危険」という評価を受けたまま解体されてしまうには
  あまりにも惜しい建物です。
  前述したように資金の元となった、震災助成金というお金を供出した国や、学院関係者にも申し開きが
  つかないのではないでしょうか。

  過去の建築物の耐震性能がこんな形で評価されていくとしたら、千代田区ばかりでなく、日本中の
  近代建築物が耐震性能の不足を理由に解体される恐れがあ ります。
  大げさな表現かもしれませんが、そんな危険な建物の中で、住民が暮らしているとしたら、大きな問題に
  なります。
  耐震偽造問題で建築界の信用が失われている中、鉄筋コンクリートの初期の建築物の耐震設計が、
  どう行われたかを実証するためにも、千代田区にも、建築学会にも協力いただき、先ずは是非学術的に
  精査な耐震診断を実施するようお願いいたします。


2.について
  現在時事問題となっているアスベストは主に、鉄骨構造の耐火被覆材として繊維がフワフワした状態で
  使用されるか、板状の材料に含有されてきました。
  前者は建物の使用者にも健康被害が出る可能性が高いものですが、板状の材料に使用されている
  場合は、製造過程と、取り壊しの時に繊維状のアスベストが飛散して健康被害が出る可能性があります。
  文化学院の場合は鉄筋コンクリート造で天井に使用とされているので、おそらく板状の天井材だと
  思われます。
  もちろんアスベストの除去は行われるべきで すが、使用者にすぐに健康被害が出るものではなく、
  天井を張り替えればよいものです。


1. 2はいずれも現在社会問題になっている事項を前面に出し、ある種脅し 文句に使っているようなきらいが
見受けられます。
3.に関しては技術的には対応可能ですが、工事費の問題だと思われます。
4.の日照に関しては濱田病院は文化学院の東側にあたり、圧迫感は否めませんが、日中の日照は今までと
変わるものではありません。
5.に関しては経済的な問題で、実はこの部分が一番大きな理由のようです。
6.に関しては旧館の図面が170枚と構造計算書が2通、学院に保存されているようで、それを元に計画を
行えば、一部解体して工事を行い工事後再建も可能。
また、近年建築界では様々な手法で保存活用がなされているので、一部取り壊した上で、新築校舎と旧館を
うまく融合させることも設計の手腕にかかっています。
7.8に関しては全体で確認申請を提出しても、奥の高層棟から工事を進め、 一部仮使用という形で、
部分使用が可能です。
学校や病院などでは当たり前に使用されている方法です。

学校の校舎新築と、旧校舎の保存を第一に進めている計画であれば、これらの 問題点は解決されるものと
考えられます。
また、校舎以外のスタジオや、地下二階の駐車場は建築費の高くつくものです。


* * *


4月14日 千代田区街づくり推進部と建築指導課の仲介で、文化学院を愛する会と文化学院との話し合いが
もたれる。

前面にアーチ部分の壁面を2層分新しく作った門のようなものを作る案が設計者から提案されたが、
旧建物を利用するものではなく、とうてい受け入れられるような案ではありませんでした。
また、3月27日の話し合いで学校側から愛する会に対し、
「古いものなら何でも 良いのか?」
という発言がありましたが、学院側は旧館の価値を認めていないということなのか?という質問に対し、
保存に関しては十分検討を重ねたが、 残念ながら不可能であったという従来からの説明を繰り返すのみで
ありました。
出席していた街づくり推進部の課長からも
「愛する会のメンバーには、今までの学校の対応と発言に旧館建物に対する愛情が感じられないのでは
ありませんか?」
という第三者の発言もされました。

4月14日、日本建築家協会からも保存活用に関する要望書が提出されましたが、DOCOMOMO JAPANに
送付されたものと同文の回答書が翌日に送付され、日本建築家協会からの要望を真摯に受け止めたとは
考えられません。

5月2日、千代田区を通して、文化学院に愛する会からの提案図面が示された。
私たちの案は「文化学院の旧館と新館を共存させる案」として、平面図と模型を制作しました。
本来は文化学院側からこのような案が提案されることを待っていましたが、「イメージ保存」案として、
旧館解体を前提とした案が示されるだけで、解体予定日が迫ってきたため、仕方なくこちらから提案することと
しました。 提案図面と模型写真は追ってホームページ上にも公開します。












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